主なプロジェクト

 

01 淀城堀のハス再生プロジェクト

【更新中】

02 中池見湿地におけるニホンイシガメの個体群研究と生息域内保全

 ニホンイシガメは河川改修、乱獲、外来カメ類との競合(特にアカミミガメ)、クサガメによる繁殖干渉及び交雑に伴う遺伝的攪乱、外来捕食者(アライグマ)による殺傷、耕作放棄に伴う生息環境の悪化等の様々な要因による影響を受け、分布域の各地から消失しつつあります。
 これまで、福井県敦賀市にある中池見湿地は様々な人為的要因による影響から免れた日本でも有数の健全な生息地でしたが、2016年に実施した「NPO法人中池見ねっと」のメンバーらとの調査により、クサガメの侵入と交雑化が確認されました。

 クサガメによる影響によってニホンイシガメが局所絶滅する恐れがあることから、2016年よりニホンイシガメの標識再捕獲調査の実施と並行して、クサガメ及び交雑個体の防除対策を開始しました。
 8年間の調査により、湿地には孵化幼体から成体までの様々な生育段階のニホンイシガメが生息することが明らかになるとともに、個体数の年変動は安定または僅かに増加していることが示唆されています。
 クサガメと交雑個体の排除がニホンイシガメの個体数増加に寄与していることを検証するために、今後も継続してニホンイシガメの捕獲調査とクサガメ及び交雑個体の防除を進めていく予定です。

 ニホンイシガメは日本広域に生息する普通種であったにも関わらず生活史に関する個体群研究がほとんど行われてこなかったため、保全対策に活用できる基礎状況が不足しています。
 また、主要な減少要因の特定に加え、その影響を排除する生息域内での保全対策もほとんど行われてきませんでした。
 中池見湿地での個体群研究を継続することで、ニホンイシガメの生活史の解明に加え、有効な保全策を検討するための基礎情報を得ることができると期待されます。
 加えて、主要な減少要因の排除によってニホンイシガメの個体数が回復したことを示す、世界初の成功事例となることが期待されます。

 ラムサール条約湿地とともに守られてきたニホンイシガメの局所個体群を絶滅させないよう、残された課題の整理を行うとともに、現実的な解決策を模索しながら適切な対策を実行していく予定です。

関連論文
1. Kagayama, S., Nishibori, T., Uenoyama, N., Kume, T. and Tada, N. 2024.Population dynamics of the Japanese pond turtles (Mauremys japonica) in a Ramsar wetland conserved from primary anthropogenic negative disturbances inJapan. Current Herpetology 43(2): 188-202.
2. 加賀山翔一・西堀智子. 2021. ラムサール条約湿地・中池見湿地におけるニホンイシガメの個体群構造と成長. 伊豆沼・内沼研究報告 15: 1-13.
3. 西堀智子・上野山雅子・宍倉慎一朗・加賀山翔一・前澤勝典・長谷川雅美.2020. 中池見湿地におけるカメ類の生息状況 ~深刻な現状と保全対策について~. 爬虫両棲類学会報 2020(2): 157-162.

当法人でのこれまでの取組
2022年12月4日 当法人メンバーの研究が論文になりました!
2023年3月28日 「中池見湿地の今をシェア!子どももおとなも みんなで報告会」に参加&カメの生息調査を行いました
2023年7月30日 中池見湿地(福井県敦賀市)でカメの生息調査を行いました
2023年9月8日  中池見湿地(福井県敦賀市)でカメの生息調査を行いました
2024年8月28日 当法人メンバーの研究が論文になりました!
2024年9月13日 中池見湿地(福井県敦賀市)でカメの生息調査を行いました

03 奈良県レッドデータブック改定に伴うカメ類の生息状況調査

 奈良県レッドデータブック(2016)ではニホンイシガメは絶滅危惧種に、ニホンスッポンは情報不足種に指定されていますが、2027年度のレッドデータブックの改定にあたり、それらカメ類の現状を知るための調査データや調査する人材が不足していました。そこで2023年、当法人の西堀が両生類爬虫類分科会の委員に委嘱され、当法人のメンバーでワーキンググループを作って調査することになりました。

 2023年夏~秋には大阪府と境界を接する香芝市・葛城市・御所市・五條市のため池(一部河川)の目視調査を行いました。目視調査は日光浴をしたり泳いだりしているカメの種類や数をチェックするだけでなく、カメ類、特にニホンイシガメが生息するのに良好な環境であるかどうかを評価します。また、かご罠調査を行うことができるかどうか(かご罠を安全に設置できるかどうか)を判断します。そうしてその中から選定したため池で捕獲調査を行いました。その後冬には大和高田市の池干し調査、2024年には宇陀市・御杖村・曽爾村・天川村・黒滝村・下市町・高取町・大淀町・吉野町・東吉野村・天理市・桜井市・生駒市・平群町・山添村・・・と目視調査を続け、同様に選定したため池や河川でかご罠による罠かけ調査を続けました。

 残念なことに、これまでに健全な個体群が維持されていると判断されるような地域は皆無でした。
 まず、そもそもニホンイシガメが目視も捕獲もできない地域が多く、その中でも交雑個体(ニホンイシガメ×クサガメ)だけは見つかるということもありました。僅かな回数の調査で明言することはできませんが、確実に過去にはニホンイシガメが生息していたにもかかわらず、現在は恐らくは生息していないということです。またニホンイシガメがごくわずかに捕獲されるものの、老齢個体、特にメスだけといった地域、複数個体捕獲されるもののクサガメが侵入しており雑種が捕獲されたところなど、将来が心配な地域もありました。

 2025年度にはこれまで調査してこなかった南部~南東部の地域(川上村・十津川村・上北山村・下北山村など)で調査を行う予定です。
 私たちはニホンイシガメやニホンスッポンがレッドリストのどのカテゴリーに入るかを判断するだけでなく、調査地の環境や捕獲されたカメ類の状態をしっかり評価して減少要因を明らかにし、今後の保全のために必要なことを提案していきたいと思っています。

当法人でのこれまでの取組
2023年6月12日 当法人メンバーが奈良県レッドデータブック改定に係る委員等に就任しました
2023年9月  3日 奈良県でカメの目視調査を行いました
2023年9月17日 奈良県内でカメの生息調査を行いました